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NOVEL

頭が真っ白になって、入ってくる情報は全て素通りして行く。掴まれた左腕の骨がみしみしと悲鳴を上げているような気もするが、痛みは感じない。ただ燃えているように熱く(実際焼けているのかもしれない)皮膚を通り越して筋肉や骨まで火傷した様にひりひりしている幻覚。
あぁ皮膚が焼かれているんだきっと彼の人は太陽の神様だからと勝手に納得して目を逸らした。その際、冷えた髪から滴った一雫がポツリと熱を持った身に落ちる。音を立てて蒸発したのは夢か幻か。
視線を交わしたらきっと目が焼かれるんだ。
今まで何度も目を合わせていたくせに、今は、今だけは、何かが違う。
私は神という存在をこの時初めて畏れた。捕らわれて、今更。

じわりと首筋を汗が伝った。
時間が経ったのか経っていないのかもわからない。震える唇から途方も意味も無い言葉が出かかったとき、
名前を呼ばれて、つい顔を上げてしまった。
揺らめく炎のような燃える紅の瞳は、私の虹彩や網膜を突き抜けて脳髄に届き炸裂する。

あぁやっぱり。

この瞬間、私の心臓は灰も残さず焼き尽くされてしまったのだった。










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