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NOVEL

「私、昔は神様って嫌いだった」

引きつった顔で見返してくるものだから、フォローしようかとも思ったが、その顔があまりに面白かったのであえて言わなかった。
眼下に広がるハモニカタウン。そう、私は抱きあげられて空を飛んでいる。(お願いしたら渋々な感じで了解された)馬鹿となんとかは高いところが好き、って言われたけど、一緒に飛んでくれるあなたもあなたよね。なんて。
こんな状態で冒頭の言葉を口にしたので、落とされるかなとも思ったが、その様子もないので安心して空中散歩を楽しんでいる。

「・・・良い度胸だな」
「うーん・・・まぁ続きを聞けば眉間のシワも何本か消えると思う」

眉間をやわやわと人差し指で揉み解しながら、ね?と宥めてみた。自分も随分この人に大きな事が言えるようになったものだ。

「両親が立て続けに亡くなった時・・・神様が連れてっちゃったんだって思ったのよね。小さい私は」

今思うと理不尽で勝手な話だが、当時の私は本気だった。外面だけ笑っていた私には、神様しか悲しみをぶつける対象が無かったから。

「これまで祈っていた神様、嫌いになっちゃったの」
「・・・その嫌いな神に今抱き付いているのは誰だ」
「まぁまぁ昔話だと思ってよ。それくらい人生何が起きるかわかんないってこと」

風で巻き上がる髪を押さえ、口元を緩めた。
年をとるにつれ嫌いという気持ちは無くなり(神父様に諭されたし)、また祈りを捧げていたわけだが、ここに来て直接会えたのが全ての始まりだった。

「まさか本当に神様に会えるなんてね」

肩から首に腕を回して、ぼんやりした意識の中目を閉じる。このまま寝てしまいそう。
遠い昔、父さんに抱き付いていた感覚を思い出す。そんな事、怒るから言わないけどね。

「予想外にものぐさで不遜だったけど、」

あの時から、神様に恋をしてたような気がする。・・・これまた口が裂けても言わないけど。
近寄る顔に気付いて、唇を指で押し返す。うぅむ、神様の唇も柔らかいのか。 消えかけたシワがまた刻まれる。空にいちゃ、あなたにこうして抱き付いているしかないのに。

「神様」

ムキになってぐぐっと力を入れてくる相手に苦笑い。 綺麗な赤い赤い瞳を見つめながら、ついポロリと零した。

「今はこんなに好きなのにね」

うっかり魔が差した言葉で、私は自分で空の逃げ道を塞いでしまった。



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結局お互いに大好きっつーべたべたな二人でした。








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